Kikan 30

三輪一言が育てた、二つの種。

一つは、頑固なほどまっすぐに、主に尽くす無私の剣士に育ち、
〝理（コトワリ）〟を手にした。

一つは、しなやかにしたたかに、自我を貫く利己の剣士に育ち、
〝過（アヤマチ）〟を手にした。

Kikan 31

重なり合う情報。慣れ合わない矜持。
同じ立場。異なる《王》。

二人は交わらない目線で一番、大事な言葉を交わす。

Kikan 32

背中合わせで不敵に笑う。
相反する正義。
相反する魂。

二人の《王》がそこにいた。

じゅうよん

おまえが〝悪〟かどうか
この鼻で嗅ぎ分けさせてもらう。

もし、この俺を謀ったら……。
噛むぞ？
がぶっと。

Kikan 33

《白銀の王》と《王》に寄り添いし剣士。

互いに誰よりも大事な者を失い、
再び何よりも大事なモノを得た。
それが〝絆〟。
〝絆〟は力。

じゅうさん

今度は自分の意思で飛ぶよ。

ネズミらしく、高く、高く〝チュウ〟だね！

Kikan 34

八田さーん、ぽかすか殴んないでくださいよ。
うるせー。おまえがモタモタしているのが悪いんだろ！
もう。なんでそんな急いでるんすか？
決まってるだろう？

オレたちの戦いが始まるんだよ。

Kikan 35

ここが安らぎの場所だった。
あの人の〝赤〟に守られた、暖かい場所。

今度は私が、この場所を守る〝赤〟になる。

Kikan 36

シロを探す旅の途中で

「クロスケ！　お魚いるかな？」
「どうだろうな。足を休めたらまた出発するぞ」
「お腹すいたなぁ」
「……仕方ない、今晩は魚にしてやる」

Kikan 37

昔は、小さな世界を共有していた。

だけどお前は裏切った。
裏切ったのに、何度も俺の前に現れた。
裏切ったのに、俺に手を貸してくれた。
なあ、猿比古。お前は――